再注目される「塩麹」とは?
いま、再び脚光を浴びている日本の伝統調味料「塩麹(しおこうじ)」。
かつて一大ブームを巻き起こしたこの発酵食品が、2025年現在、再評価されています。理由のひとつは、その万能性と健康効果にあります。食材に漬け込めば旨みが引き出され、肉や魚は柔らかく、野菜はコクのある一品に。しかも塩の代わりに使えるため、減塩しながらも満足感のある味付けが可能です。
そんな塩麹がいま、日本だけでなく海外でも注目の的に。特にヨーロッパの美食都市では、「Shio Koji」として健康志向の食文化と親和性が高い点が評価され、新しい発酵調味料として徐々に浸透しつつあります。
中でも大手味噌メーカーのハナマルキが仕掛ける海外展開は注目に値します。味噌の技術を活かしながら、塩麹を“次の調味料”として世界に広めるべく、本格的なプロモーションが進んでいます。
本記事では、塩麹がなぜ今、世界で注目されているのか?
そして、ハナマルキをはじめとする日本企業がどのように塩麹の価値を海外に届けているのかに迫ります。

「Shio Koji」が世界で人気?注目される背景とは
「Shio Koji(塩麹)」という言葉が、今や日本だけでなく海外の食シーンでも聞かれるようになっています。近年、欧米を中心に発酵食品への関心が高まり、キムチや納豆、味噌、テンペなどが健康志向の人々に愛されるようになりました。そんな中で新たな注目株として浮上しているのが、日本発の塩麹です。
塩麹が評価される大きな理由のひとつは、グルテンフリー・ビーガン対応という点です。動物性の原料を含まず、植物性かつナチュラルな製法で作られるため、食の制限がある人でも安心して使える調味料として受け入れられています。さらに、麹の持つ酵素の力によって、食材の旨味を自然に引き出すことができ、**「ヘルシーなのに美味しい」**という点が世界中の料理人や食通の関心を集めているのです。
また、「Miso(味噌)」がすでに海外で一定の認知を得ている中で、塩麹はよりシンプルで使いやすいと感じられているのもポイント。調味料としてはもちろん、マリネ、ドレッシング、グリル、スープのベースなど、用途の広さも魅力です。
こうした背景のもと、日本企業も塩麹の可能性に注目しはじめています。とくにハナマルキがミラノで展開する「SHIO KOJI」プロジェクトは、塩麹のグローバル化を象徴する挑戦といえるでしょう。

ハナマルキの挑戦:塩麹を“SHIO KOJI”としてイタリアへ
味噌や即席みそ汁でおなじみの老舗食品メーカー、ハナマルキ(長野県伊那市)が、今、新たな挑戦として「塩麹」を世界に売り込もうと動き出しています。そのターゲットとなっているのが、美食の国イタリアです。
ハナマルキは、味噌の製造で培った発酵技術を応用し、塩麹を単なる和の調味料としてではなく、“Shio Koji”というグローバルブランドとして再定義。単なる「日本の伝統調味料」ではなく、「旨味を引き出すナチュラルエッセンス」として、イタリア市場に向けた商品展開を進めています。

料理通信「世界のシェフを刺激するハナマルキ「液体塩こうじ」 vol.2」
美食の街ミラノでのプロモーション
展開の舞台となったのは、イタリア北部の都市ミラノ。ファッションと同様にグルメの街としても知られるこの都市で、ハナマルキは塩麹を使ったメニューの試食イベントや、現地シェフとのコラボレーションを通じて、「Shio Koji」の魅力をアピールしてきました。
現地のレストランでは、肉の下味や魚のマリネ、さらには野菜のグリルにまで塩麹が使用され、「しっとり柔らかく、味に深みが出る」と好評を博しています。調理の手間をかけずに素材の旨味を引き出せることは、料理の効率化を求める現地のプロにも受け入れられやすく、プロ向け市場への導入も視野に入れた戦略です。
「MISO」に続く発酵調味料としての地位を狙う
味噌(Miso)は、すでに日本を代表する調味料として世界中に知られる存在です。ハナマルキは、この味噌の成功事例を踏まえ、「Shio Koji」がその次に来る発酵食品になると考えています。実際に欧州では、発酵食品の健康効果が広く認知され始めており、「Shio Koji」という新しい選択肢に注目が集まっているのです。
また、ハナマルキは業務用のパッケージ開発も進めており、飲食店や食品加工業者に向けた販路拡大も図っています。家庭用だけでなくプロユースでも通用する品質と応用力を武器に、イタリアからヨーロッパ全体へと展開を進めようとしているのです。
欧州に広がる“塩麹レシピ”と使い方の変化
日本の伝統的な発酵調味料「塩麹(Shio Koji)」が、今ヨーロッパの食文化の中で静かに、しかし確実に広がりを見せています。イタリアを皮切りに、フランスやドイツ、スペインなどの国々でも健康志向の人々を中心に支持を集め、従来の“和食の調味料”という枠を超えた使い方が増えてきました。
“旨味ブースター”としての再発見
ヨーロッパでは、塩麹は「UMAMI(旨味)を引き出す調味料」として再評価されています。もともと西洋料理にはない“旨味”という概念ですが、シェフや食通の間では味に奥行きを出す素材として注目されています。
たとえば、
- 肉のマリネや下味調味料
- パスタのソースに加える隠し味
- 野菜スープやリゾットのベース調味料
- サラダのドレッシング
といった形で、現地の料理に自然に取り入れられています。
特に肉類に塩麹を使うことで、柔らかさとジューシーさが格段にアップするという点は、プロの料理人からも高く評価されており、食材のロス削減や調理時間の短縮にも貢献しているという声が挙がっています。

レストランや料理教室でも“Shio Koji”がトレンドに
ミラノやパリの料理教室では、「発酵食品を取り入れた健康レシピ」の一環として塩麹を紹介するケースが増えています。また、オーガニックやビーガンをコンセプトにしたレストランでも、動物性食材を使わずに旨味を演出できる万能調味料として、塩麹を取り入れる店舗が急増しています。
一部のフードインフルエンサーやYouTuberによる「塩麹の使い方動画」も注目を集めており、英語圏でも“Shio Koji”というキーワードの検索数は徐々に増加中です。
食文化を越える塩麹の可能性
こうした広がりを受け、塩麹は単なる日本の伝統食材ではなく、グローバルに使える発酵調味料としての地位を築きつつあります。もはや味噌や醤油のように、「和食専用」ではなく、「世界のどの料理にもマッチする調味料」としての進化が始まっているのです。
なぜ今、“発酵食品”が注目されるのか?
ここ数年、欧州をはじめとする世界の食市場で「発酵食品」への関心が急速に高まっています。その背景には、健康志向の高まりや、免疫力アップへの期待、さらにはサステナビリティ(持続可能性)への意識の変化など、現代社会が抱える課題と密接に関係しています。

健康意識の高まりと腸活ブーム
パンデミック以降、「免疫力を高めたい」「身体にやさしい食生活を送りたい」と考える人が急増し、その中で注目されたのが腸内環境の改善です。ヨーグルトやキムチなどに代表される発酵食品は、腸内細菌のバランスを整える“腸活”に効果的とされ、塩麹もその一つとして注目を浴びています。
塩麹は、生きた酵素が含まれており、食材を分解して消化を助けるほか、美肌や疲労回復にも良いとされており、特に女性を中心に人気が高まっています。
発酵の魅力は“自然”と“深い味わい”
発酵食品が好まれるもう一つの理由は、化学調味料や添加物を使わず、自然の力で味わいを引き出すという点です。塩麹のように、時間をかけて素材の旨味を引き出す調味料は、“クリーンイーティング(Clean Eating)”=加工度の低い食を重視するライフスタイルにもマッチします。
ヨーロッパでは“Slow Food(スローフード)”の考え方が根強く、地元の食材を丁寧に扱う食文化が根付いています。塩麹はその哲学と見事に融合し、伝統と革新が同居する食材として受け入れられているのです。
発酵食品=サステナブルな選択
さらに近年、食におけるサステナビリティも重要なキーワードとなっています。発酵という保存技術は、食品ロスの削減や保存料に頼らない食文化と親和性が高く、環境意識の高い層からも支持を得ています。
塩麹は保存もきき、調理に使えば食材の味を引き立て無駄なく活用できるため、**“持続可能な調味料”**として評価されることも少なくありません。
“Miso”から“Shio Koji”へ:海外での認知とブランディング
長らく海外では日本の発酵調味料といえば「Miso(味噌)」が定番でした。和食ブームとともに味噌汁や味噌ベースの料理が親しまれ、特に欧米では健康志向の食材として定着しています。
しかし近年、「Shio Koji(塩麹)」という新たなキーワードが登場し、注目を集め始めています。

ハナマルキが仕掛ける“Shio Koji”ブランド戦略
その牽引役となっているのが、大手味噌メーカー・ハナマルキです。同社は、長年にわたり培ってきた発酵技術と味噌開発のノウハウを活かし、塩麹の製造・輸出にも積極的に取り組んできました。
ハナマルキは、単に塩麹を海外市場へ輸出するのではなく、「Shio Koji」という名称でブランディングを強化。特に食の都・イタリア・ミラノでは、現地のレストランシェフとのコラボを通じて、“新しい調味料”としての価値を伝えるプロモーション活動を展開しています。
現地の料理人の中には、Shio Koji を「ナチュラルなマリネ液」「グルテンフリーの旨味調味料」として高く評価する声もあり、味噌とは異なる新しいポジションを獲得しつつあるのです。
塩麹が持つ“ユニークさ”と市場のニッチ性
塩麹は、味噌や醤油ほどの知名度こそありませんが、それが逆に“ユニークな調味料”としての魅力につながっています。とくに発酵食品に敏感な健康志向の層や、ビーガン・グルテンフリー食を求める層にとっては、味噌以上に柔軟性があり、使いやすい存在と映るのです。
この“ニッチ市場への深い浸透”という点において、Shio Koji は、味噌とは異なる道を切り拓いているともいえるでしょう。
言語の壁を超えた「発酵の魅力」の伝達
また、海外において日本の調味料を広める際に障壁となるのが“言語の壁”や“用途のイメージの違い”です。ハナマルキはこれに対し、「Shio Koji」の使い方を明確に伝えるレシピ動画や現地語の調理パンフレットなどを展開し、「どのように使えば良いか」を視覚的・実践的にアプローチしています。
こうした地道な取り組みによって、塩麹は徐々に“Misoに続く新たな日本発の調味料”として、海外市場での存在感を強めつつあります。
まとめ:塩麹が開く“世界の食卓”への扉
かつては日本の家庭で親しまれてきた伝統的な発酵調味料「塩麹」が、いま世界へと羽ばたこうとしています。その背景には、健康志向の高まりや、グルテンフリー・ナチュラル志向といった食のトレンドがありました。
ハナマルキは、単なる製品輸出にとどまらず、“Shio Koji”というブランドとして塩麹を世界に発信。特にイタリア・ミラノでの取り組みは、塩麹を「新しい味の引き出し」として評価させる一歩となりました。
味噌とは異なる位置付けで、塩麹は“発酵の力”を持ったユニークな調味料として、今後さらに注目される存在となるでしょう。現地のレストランや一般家庭での使用が広がれば、日本の食文化の奥深さがより多くの人々に伝わるはずです。
これからの食卓に、“Shio Koji”という新しい選択肢が加わることで、世界の料理に日本の伝統がそっと溶け込んでいく――そんな未来が、すぐそこに来ているのかもしれません。