2025年9月11日放送のテレビ東京『カンブリア宮殿』では、長野県の味噌メーカー ひかり味噌 が取り上げられました。国内の味噌市場が縮小するなかで、同社は 有機みそ・減塩みそなど高付加価値商品 に注力し、14年連続で売上を伸ばす業界3位の存在へと成長しました。大ヒット商品「CRAFT MISO 生糀」をはじめ、2025年3月に発売された新感覚甘酒「晴れのち糀」など、伝統を守りつつ革新を重ねる戦略が注目されています。番組では、創業家出身の林善博社長のリーダーシップと、多品種少量生産による差別化戦略に迫ります。本記事では、「カンブリア宮殿 ひかり味噌」放送内容の見どころと最新商品トピック を整理し、味噌業界の未来を読み解きます。
ひかり味噌とは?歴史と業界での位置づけ
長野に根ざした味噌メーカー
ひかり味噌株式会社は、長野県諏訪郡下諏訪町に本社を置く老舗味噌メーカーです。創業は1936年、地元の発酵文化を背景に事業を拡大し、現在では日本国内のみならず、欧米やアジアを中心とした海外市場にも輸出を行うグローバル企業へと成長しています。
業界3位の存在感
日本の味噌市場はマルコメやハナマルキといった大手がシェアを握る中、ひかり味噌は 業界3位 のポジションを確立。市場が縮小を続ける中でも、オーガニックや減塩といった付加価値商品に注力し、14年連続で売上を伸ばすという異例の成長を遂げています。
「オーガニック味噌」のパイオニア
同社の特徴は、早くから 有機JAS認証を取得した有機味噌 を展開してきた点にあります。1990年代後半から欧米市場を意識し、有機原料を使った商品を拡充。国内外の健康志向やオーガニック需要を取り込み、競合他社との差別化に成功しました。
海外市場での評価
現在では、アメリカやヨーロッパの自然食品店・スーパーで「HIKARI MISO」ブランドが販売されており、海外売上比率も上昇しています。日本の伝統食品である味噌を世界市場に広げる存在としても注目されています。
国内市場縮小の現状と課題
味噌消費量の長期減少
かつて日本の食卓に欠かせなかった味噌汁ですが、統計を見ると国内の味噌消費量は年々減少しています。1980年代には1人あたり年間約10kg以上消費されていたのに対し、現在はその半分以下に落ち込んでいます。食の多様化や洋風化、そして家庭で調理する機会の減少が大きな要因です。
若年層の“味噌離れ”
特に顕著なのが若年層の「味噌離れ」です。即席食品や外食産業の利用拡大により、味噌汁を毎日飲む習慣を持たない世代が増加。さらに「塩分が高い」というイメージもあり、健康志向の高まりと逆行する部分も指摘されています。結果として、家庭内での味噌の消費は右肩下がりが続いています。
国内メーカーが直面する課題
市場全体の縮小は、味噌メーカーにとって厳しい現実です。
- 価格競争の激化:大手と中小の差が拡大。
- 需要の減少:国内市場のパイを取り合う構造。
- 高齢化社会の影響:主要消費層である中高年層が減少。
このような状況下で、単純な「量」を追う戦略では持続的な成長は難しいとされています。
求められる新しい価値提案
だからこそ、ひかり味噌のように 「有機」「減塩」「新しい食べ方の提案」 といった高付加価値戦略が注目を集めています。市場が縮小していても、新たな需要を掘り起こすことができれば成長余地は残されています。
成長の柱①:CRAFT MISO 生糀の大ヒット
“そのまま食べてもおいしい”という新発想
ひかり味噌の近年最大のヒット商品が、2022年に発売された 「CRAFT MISO 生糀(なまこうじ)」 です。従来、味噌は「味噌汁用の調味料」というイメージが強かったのに対し、この商品は “そのまま食べてもおいしい” をコンセプトに開発されました。生の糀の甘みとフルーティーな香りを活かし、味噌汁以外にもディップや調味ソースとして幅広く使えるのが特徴です。
減塩・高付加価値でヒット
CRAFT MISO 生糀は、健康志向の高まりに対応して 減塩タイプ として設計されています。塩分を控えつつも、糀由来の自然な甘みと旨味によって「コクのある味わい」を実現。
- サラダにそのまま添える
- 野菜スティックのディップに使う
- パンやクラッカーに塗る
といった新しい食べ方の提案が消費者に支持されました。
大ヒット商品として定着
発売からわずか数年で「CRAFT MISO 生糀」は、味噌カテゴリーを超えた“新しい調味料”として市場に広がり、スーパーやECでも人気商品となっています。従来の「味噌=汁物専用」という固定概念を打ち破り、 “二つ目のみそ” という位置づけで新しい市場を開拓しました。
成功のポイント
- 健康志向(減塩・無添加)を捉えた商品設計
- 食卓での「使い勝手」を広げる多様なレシピ提案
- SNSやメディアで「新しい味噌の楽しみ方」として拡散
この戦略的ヒットが、縮小傾向にある国内市場の中で、ひかり味噌の成長を支える柱の一つとなっています。
成長の柱②:新商品開発と多品種少量戦略
新感覚甘酒「晴れのち糀」
2025年3月に発売された 「晴れのち糀」 は、従来の甘酒とは一線を画す“甘酸っぱい”味わいが特徴です。発酵由来の自然な甘みと爽やかな酸味を掛け合わせることで、「甘酒は甘すぎて飲みにくい」というイメージを覆し、若年層や女性を中心に人気を集めています。リフレッシュドリンクや朝食代わりとして新しい市場を切り開きました。
季節限定や話題性商品でファンを拡大
ひかり味噌は「定番商品の安定供給」だけにとどまらず、季節限定・多品種少量の商品投入 を積極的に行っています。
- 「味噌ヌーボー 初熟」:ワインのボジョレー・ヌーボーを連想させるように、仕込みたての味噌を楽しむ新発想商品。
- 「大寒仕込み味噌 渾」:冬の寒仕込みという伝統製法に着目し、プレミアム感を演出。
- 「とっさのみそ汁」:携帯性や即席性を重視し、忙しい現代人の生活スタイルに対応。
これらは大量販売を狙うのではなく、少量多品種で話題をつくり、ファンを増やす狙いがあります。
多品種少量戦略の強み
縮小する国内味噌市場で勝ち残るには、従来型の「大量生産・大量消費」モデルでは限界があります。ひかり味噌はあえて ニッチな需要 に応えられる柔軟性を武器としています。
- 健康志向(減塩・有機・低糖質)
- 味の多様化(フルーティーな味噌、甘酸っぱい甘酒)
- 利便性(携帯・即席・時短調理対応)
こうした多角的なアプローチにより、縮小市場の中でも安定成長を実現しているのです。
成功の背景
林善博社長のリーダーシップのもと、開発現場には「挑戦的な商品を出して市場の反応を見極める」文化が根付いています。結果として、他社が躊躇するようなユニークな商品でも、ひかり味噌は果敢に投入し、ブランド全体の存在感を高めています。
成長の柱③:オーガニック&健康志向の取り込み
オーガニック市場の先駆者
ひかり味噌は、日本国内でも早くから 有機JAS認証みそ を展開してきたメーカーです。特に欧米市場では「ORGANIC MISO」として高い評価を得ており、ナチュラルフードストアやオーガニックスーパーで広く流通しています。国内市場が縮小する中でも、海外需要を取り込み成長を続けているのは、オーガニック商品を柱に据えてきた戦略の成果です。
健康志向に応える商品ラインナップ
国内市場においても、「減塩」「無添加」「植物性」などの健康ニーズに合わせた商品を多数展開しています。
- 減塩みそ:CRAFT MISO 生糀など塩分を抑えながら旨味をしっかり残す設計。
- 有機そだちシリーズ:有機原料を使用した即席みそ汁など、手軽に健康を意識できるラインナップ。
- 甘酒「晴れのち糀」:乳酸発酵の甘酸っぱさを加え、従来の「甘すぎる甘酒」のイメージを刷新。
“健康+伝統”の両立
伝統食品である味噌は「塩分が高い」というイメージがつきまといますが、ひかり味噌は糀の力や発酵技術を活かすことで、減塩でもおいしい味噌を実現。健康志向の高まりをチャンスに変え、若い世代や女性層を新たな顧客として取り込んでいます。
海外展開とブランド強化
特に北米・ヨーロッパでは、オーガニックやプラントベース食品が主流になりつつあります。ひかり味噌は早くから輸出を強化しており、世界の「ヘルシーフード市場」に日本の味噌を広める役割を担っています。これは単なる輸出拡大ではなく、“日本の発酵文化を世界へ” というブランド価値の向上にもつながっています。
林善博社長のリーダーシップ
創業家出身のトップとして
ひかり味噌の代表取締役社長・林善博氏 は、創業家の出身でありながら、伝統を守るだけでなく積極的に革新を進めるリーダーとして注目されています。味噌市場が縮小するなかで、14年連続売上増を達成できた背景には、林氏のリーダーシップと柔軟な戦略判断があります。
「伝統を守りながら革新する」経営哲学
林社長は、味噌を単なる調味料にとどめず、「食卓を豊かにする新しい食材」 として再定義しました。
- CRAFT MISO 生糀で「そのまま食べてもおいしい味噌」という新しい市場を開拓
- 晴れのち糀や味噌ヌーボーなど、これまでになかったカテゴリーの商品を投入
- 有機・減塩といった健康志向や海外のオーガニック市場を見据えた商品展開
伝統を重視しつつ、消費者のライフスタイルやトレンドに合わせて味噌の可能性を広げる姿勢が、成長の原動力となっています。
多品種少量生産の推進力
林社長の下で進められる戦略の大きな特徴が 「多品種少量生産」 です。大量生産ではなく、ニッチなニーズに応える多彩な商品を展開することで、縮小市場でも新しい需要を掘り起こしています。この挑戦的な商品開発は、社員のアイデアを積極的に採用し、市場の反応を見ながら改良を重ねるスピード感のある体制によって実現しています。
社員を巻き込むリーダーシップ
林社長はトップダウンで命令するのではなく、社員が意見を出しやすい環境を整え、「挑戦できる企業風土」 をつくることに注力しています。結果として、開発チームからは革新的な商品が次々と生まれ、組織全体に前向きな空気が広がっています。
今後の展望と番組の見どころ
味噌を「調味料」から「ライフスタイル食品」へ
ひかり味噌が目指すのは、味噌を単なる伝統的な調味料としてではなく、日常のさまざまなシーンで楽しめるライフスタイル食品 として再定義することです。CRAFT MISO 生糀のように「そのまま食べられる味噌」や、晴れのち糀のように「飲んで楽しむ発酵飲料」を次々と市場に送り出すことで、若年層や海外市場にまで裾野を広げています。
グローバル展開の加速
すでに北米や欧州では「ORGANIC MISO」としてブランドが浸透しており、オーガニック・健康食品のカテゴリーで確固たる地位を築きつつあります。今後はさらにアジア圏への展開や、即席味噌汁など利便性の高い商品の海外普及が進むと予想されます。「発酵食品=日本の文化」 を世界に広める役割を担う存在として期待されます。
カンブリア宮殿での注目ポイント
9月11日の放送では、以下の点に特に注目が集まりました。
- 大ヒット商品「CRAFT MISO 生糀」が生まれた背景と開発秘話
- 新感覚甘酒「晴れのち糀」をはじめとする、多品種少量戦略の裏側
- 創業家出身の林善博社長が語る「伝統と革新の両立」への思い
- 縮小市場でも14年連続で売上を伸ばし続ける成長戦略の核心
まとめ
国内市場が縮小する中でも、ひかり味噌は CRAFT MISO 生糀 や 晴れのち糀 といった革新的な商品を次々に投入し、14年連続で売上を伸ばしています。林善博社長のリーダーシップのもと、伝統を守りながら新しい価値を創造する姿勢は、味噌業界のみならず日本の食品産業全体に示唆を与えるものです。9月11日放送の『カンブリア宮殿』では、その戦略の核心が明らかになるでしょう。